オーストラリアの予防接種パンフレット日本語版(2)
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Commonwealth of Australia 2005
ISBN 0 642 82783 4
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本書中にある商標名は、あくまでも識別のために使用しており、特定商標の薬物またはワクチンを推奨するものではありません。
1995年4月初版 2005年10月改訂
本パンフレットに記載したすべての情報は、万全を期して印刷を行っております。本書は、オーストラリア全国予防接種プログラム(National ImmunisationProgram)と提携し、オーストラリア保健・高齢省(Australian GovernmentDepartment of Health and Ageing)のイニシアティブの下、全国予防接種委員会(National Immunisation Committee)との協議の結果、発行しました。保健・高齢省発行 承認番号3744目次
序文
第 1 節 予防接種とは 5
第 2 節 ワクチンおよび予防の対象となる疾患: 13
. B型肝炎 13
. ジフテリア、破傷風、百日咳 16
. 灰白髄炎(ポリオ) 21
. B型インフルエンザ菌(Hib)感染症 24
. 肺炎球菌感染症 26
. 麻疹、おたふく風邪、風疹(三日ばしか) 31
. C群髄膜炎菌感染症 36
. 水痘 41
第 3 節 予防接種特別条件 - アボリジニおよびトレス海峡島しょ民の児童 43
第 4 節 免疫と予防接種に関する一般的な疑問 47
第 5 節 予防接種に関する一般的な疑問 55
第 6 節 誤解されやすい事例 66
第 7 節 予防接種時によくみられる副作用とその対策 68
第 8 節 パラセタモールの投与による副作用の緩和 73
第 9 節 予防接種の際、医師や、看護士に何を伝えるべきか 74
第 10 節 予防接種に関連する公的援助の条件 77
問合わせ先 (裏表紙裏面)
予防接種とは
子どもを特定の疾患から保護するための簡便、安全かつ、有効な方法です。予防接種のリスクは極めて小さく、これに比べて小児疾患のリスクははるかに大きいとされます。
本書には、小児予防接種に対する理解を深めるため、現時点で最も信頼性の高い情報を掲載しております。
本書の内容について疑問がありましたら、かかりつけの医師か診療所にご相談ください。
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3 予防接種特別条件 -アボリジニおよびトレス海峡島しょ民の児童
クイーンズランド州、北部準州、西オーストラリア州、南オーストラリア州に居住するアボリジニおよびトレス海峡島しょ民の児童は、一部の疾患に対して追加の予防接種が必要です。これに当てはまる児童は、他の児童に対して実施される通常のワクチン接種をすべて受ける必要がありますが、次のような相違点・追加点があります。
. Hibワクチン接種
Hib PRP-OMPと呼ばれるタイプのワクチンがよく用いられます。このワクチンは、乳児期のごく初期に高い予防効果を提供するもので、その時期に使用されます。対象地域のアボリジニとトレス海峡島しょ民の児童のうち、この年齢集団ではリスクが高いとされているためです。Hibワクチンは、生後2、4、12ヵ月に他の通常のワクチンと同時に接種しなければなりません。
. 肺炎球菌のワクチン接種
肺炎球菌ワクチン(PneumoVaxR23)の追加接種が、生後18〜24ヵ月に必要です。対象地域のアボリジニとトレス海峡島しょ民の児童は、他の児童よりも、肺炎球菌感染症のリスクに曝される期間が長いためです。この際に使用されるワクチンは、乳児に使用されるものとは異なります。2005年11月1日以降、アボリジニとトレス海峡島しょ民の児童に対して、以下の予防接種が実施されています。
. A型肝炎
アボリジニとトレス海峡島しょ民に属し、クイーンズランド州、北部準州、西オーストラリア州、南オーストラリア州に居住する児童では、他の児童よりも、A型肝炎の発症率が高いことから、同ワクチンの接種が行われています。生後12ヵ月から6ヵ月の間隔で2回、ワクチンを接種します。A型肝炎ワクチンとPneumoVaxR23ワクチンの接種を受ける年齢は州または準州ごとに異なります。いずれのワクチンも、対象地域に居住するアボリジニまたはトレス海峡島しょ民の児童であれば、無料で接種することができます。
4 免疫と予防接種に関する一般的な疑問
今は医療技術が発達し、衛生状態も良く、清潔な水を得られますが、それでも予防接種は必要なのでしょうか?
必要です。予防接種によって予防できる多くの病気は人から人へと直接感染するため、食料、水、衛生の状態が良くても伝染を防ぐことは不可能です。医療技術が発達しているにもかかわらず、予防接種で予防可能な疾患が原因となって起こる深刻な疾病、死亡は未だに存在します。たとえば、Hibワクチンがオーストラリアで最初に利用可能となった1993年以降、生活水準に変化がないにもかかわらず、5歳未満の児童におけるHib感染症の症例数は、劇的に減少しています。Hibの予防接種が実施される前の1992年では、396例のHib感染例が報告されていましたが、2002年の報告数はわずか12例です。
予防接種により、免疫系に過剰な負担がかかる可能性はありますか?
いいえ。子どもや大人は日々、多くの抗原(免疫系から反応を誘発する物質)と接触しており、免疫系は様々な経路で各抗原に反応し、体を保護しています。ワクチン接種を受けていない子どもが、特定の感染症に対して免疫を得るには、その感染症に曝露されるしかありません。そうした場合、深刻な疾患を発症するリスクがあります。逆にワクチン接種を受けた児童では、感染症が生じても、通常は問題にはなりません。予防接種によって得られる感染症予防効果(免疫)は、人が感染を受けた場合に生じる自然免疫と同じ様に獲得されます。ただし、疾患に伴うリスクが高いのに対して、ワクチン接種に伴うリスクは低くなります。
自然免疫は、ワクチンによって得られる免疫よりも優れてはいないのでしょうか?
自然免疫およびワクチン接種による免疫は、いずれも体の持つ免疫系による自然な反応です。両者の体内の免疫反応に差はありません。ワクチンによって得られる免疫は、時間と共に弱まる場合がありますが、感染によって獲得される自然免疫は、一生を通じて保持されるのが一般的です。問題は、野生のものからの感染あるいは自然に感染した病気の場合、深刻な疾患および時には死亡のリスクが高まるということです。免疫力が低下した児童、成人は、再接種を受けることもできます(一部のワクチンでは必須となっています)。ワクチンは、予防の対象となる疾患自体よりも何倍も安全であるという点に留意することが重要です。
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